現在の学校の黒板事情~デジタル化の流れ

最初にちょっと余談から。

黒板というと小学校の頃、使われていたイメージが強いのではないでしょうか。しかし現在、文部科学省が普及を進めようとしているのは、黒板は黒板でも「電子黒板」。

欧米の学校では主流となっている電子黒板には、動画などのコンテンツを利用できる、教材の再利用が容易になる、情報の一括管理や保存ができるなど、多くのメリットがあります。看板の世界でもデジタルサイネージが大きく話題となっているように、学校の黒板の世界でもIT化の波が押し寄せています。

ただ、新設の学校ならともかく、従来の黒板をわざわざ取り外してまで設置ということではありません。既存の黒板はそのままに、特定の授業の際に移動式のディスプレイを用意したり、黒板に情報を投影しつつ専用ペンで位置情報を通信したりするなど、色々なタイプがあるそうです。

ザ・対決! ホワイトボードvs黒板

さて、では本題。デジタルではなく、アナログでのメッセージボードについて比較してみましょう。

まずは値段や各部品の特徴に関して。

学校の場合、前述のとおり大抵の学校に黒板は設置されているという優位性があります。加えてチョークはペンに比べて安価!

さらに言うと、ペンにはインク切れの恐れがありますが、チョークの場合は直感的に残量がわかります。多少乱暴に扱っても折れこそすれど、ペン先が壊れて使えなくなるという心配は無用!

また授業で使う場合は「塗る」という行為が生じますが(赤い玉と白い玉があって……みたいなのを図示したりしますよね)、塗りやすさは断然チョークです!

ではフィールドを学校ではなくオフィスにしてみましょう。

そうなると、断然ホワイトボードに軍配があがります。

まず、備え付けの黒板は無く、むしろ移動式のホワイトボードなどがオフィス機器として用意されています。

また使用の際も、図よりも文字を書くことが多い。「行き先掲示板」などはホワイトボード製のものが大半を占めます。

そうなると一勝一敗なのですが、実際には最近は黒板よりもホワイトボードのほうが人気。その理由として、黒板の最大の弱点である「チョークで汚れやすい」という点が挙げられます。ちょっと触れただけでも粉が体や服につき、落とすのも一苦労。また、チョークの粉自体が嫌いという人も多いです。(なお、粉を吸い込む健康被害に関しては、最近は環境面にも配慮した飛散しづらいホタテの貝殻で作られたチョークといった工夫された商品も生まれています)

ちなみに見やすさという点では、個人差も多いですが、黒板がちょっと優勢。ホワイトボードの場合、表面に光沢がありつやつやしているため、光が反射した場合に見づらくなるという場合があります。白地に黒よりも、黒地に白のほうが見やすいという人が多いようです。

また話はズレてしまいますが、電子書籍を閲覧する際などは、白色はディスプレイから発光されてつくるため、黒字に白のほうが物理的な光の刺激は少なく、目に優しいとも言われています(ただし、眩しさや色の見え方などは個人差が大きいですので一つの意見としてお考えください)。

ホワイトボードが一般的な中での、黒板の独自のメリット

さて、では店舗内に置く場合、ホワイトボードと黒板とどっちがいいでしょう?

文字情報の記載という点では、ホワイトボードのほうがやや主流と思われます。備品に関してもチョークを売っているお店よりも、ペンを売っているお店のほうが多いというメリットもあります。入手のしやすい利便性の点ですね。

ただ「ホワイトボードのあるお店が圧倒的多数なんだね」と言われたら そうとは限りません。

例えば、イタリアンレストランやカフェなどで「本日のおすすめメニュー」が黒板に書かれているのを見た人も多いのでは? 本来ならば飲食店は衛生が大事なので、わずかながらでもチョークで汚れる恐れのある黒板は面倒であるハズ。なのに、なぜホワイトボードではなく黒板に書かれているのか?

あれは、メッセージを伝えるという役割に加えて、黒板によって「おしゃれ」「あたたかさ」を出すという効果を演出しているのです。店内の装飾という点を意識すると、黒板の醸し出す効果は計り知れません。

ものすごい黒板アート!

実際、黒板の効果を芸術にまで高め、最近では「黒板アート」と呼ばれる作品も登場しました。ここでは、その事例を二つほどご紹介し、改めて黒板を見直してみましょう。

バスケットボールマンガの金字塔と呼ばれる『SLUM DUNK』(スラムダンク)をご存知でしょうか? このマンガ、1996年に連載終了しました(いやあ、まさかあそこで終わるなんて本当衝撃でした。熱いマンガが好きなかた、是非お読みください…)。

しかし2004年、三日間だけの特別イベントが行われ、終了時から十日後の登場人物たちの後日談のマンガが描かれました。それがなんと、廃校になる校舎の黒板にチョークで!

警備の人はおらず黒板消しが置いてあり、やろうと思えば消すこともできたという無防備な環境だったにも拘わらず、数千人の来場者は黒板に一切手を加えることなく、じっくりとマンガを鑑賞したそうです。

2015年、大塚製薬の「カロリーメイト」のCMでは、受験に奮闘する女子高生を描いたアニメーションが流れました。と、それだけだったら単なるアニメCMなのですが、なんとイラストはすべて黒板に描いたもの! その数、実に六千枚以上! 三十人以上の美大生がのべ二千六百時間以上の時間をかけて制作したそうです。まさしくアート作品!

個人的な見解ですが、これらの黒板アートには二つの共通点があると思います。

一つは学校が舞台という点。今後どこまで電子黒板が普及するかわかりませんが、やはり黒板というと学生時代の懐かしいイメージが結びつきます。

そしてもう一つは、「消したら終わり」という刹那的要素がある点。今の技術であればいくらでも手法がある中、敢えて黒板を使うことにより、「この絵は後に残らず、見られるのは今回だけ」という特別感はグッと胸に来ます。

この二つの要素が合わさることで、黒板アートは、えも言われぬノスタルジーと親近感
を醸しだしているのではないでしょうか。

まとめ:装飾を取るか、情報伝達を取るか

メッセージを書くならばホワイトボード、と思ってましたが、黒板が醸し出す雰囲気というのもいいものですね。
独特のぬくもりやなつかしさを感じる人は多いと思います。

お店に来たお客さんに対して、単に情報を伝えたいのか、それともムードを重視したいのかによって使い分けるのがいいかもしれないですね。

ホワイトボードにせよ、黒板にせよ、最終的にはそこに書かれた(描かれた)ものが大事。そうなると、実際にお店に置く場合、そこへ文字やイラストを担当する人のセンスに拠る部分も大きいと思います。

そこは実際の担当者の方とも、意思疎通してくださいね。