どこかへ旅行した時、現在地を知るために案内地図を見たり、目的地を指し示す看板を探したりしたことはありませんか?
増加し続けている海外からの旅行者や、国内旅行者が頼りにする「案内サイン」はどうあるべきなのでしょうか。

「案内サイン」とは?

サインとは、人々の行動を補助する目的で、案内や場所の情報などを、具体的な文字や絵で分かりやすく表示し掲示したものです。
例えば、目的地を示す看板や、絵と共にトイレを示す表示や、駅ではホームの番号や進行方向を示すもの、または経路図などの案内地図もサインの一つです。
日常風景にとけこんで見慣れていますが、非常に多くの種類の案内サインがいたる所で用いられ、生活に欠かせないものとなっています。

案内サインに用いられる「図記号」は統一されている?

案内サインには、絵で情報を端的に表現した「図記号(ピクトグラム)」を用いているものも数多くありますが、そのほとんどは事業者ごとでバラバラにデザインされてきました。
国際標準化機構(ISO)で標準化されている図記号が57項目ありますが、星の数ほどある図記号の全体数から見ると、ごくわずかと言えます。

案内サインが情報を伝達したい対象者は、国内だけでなく海外から訪れる人々も含まれており、一見して内容を連想し理解できることから、図記号は文字よりも優れた情報伝達手段とされています。
近年では国際化とともに、福祉目的としての側面からも、サインマニュアルやガイドラインなどで、ある程度統一されつつあります。

「多言語対応」の案内サインとは?

海外からの旅行者は年々増加傾向にあり、その旅行形態のほとんどが個人旅行のため、多くの旅行者がサインを頼りに移動することが想定されます。
東京都が策定した「案内サイン標準化指針」における基本的な考え方は、日本語と英語の2言語を基本とし、必要に応じて中国語や韓国語などの多言語も表示する、とされています。

ただし、多言語の表示が小さくて読み取れない、または表示に気付かないということを避けるため、基本の2言語以外を用いる際は、視認性に注意が必要です。
また、パンフレットを手にサインと照らし合わせて移動する場合が多いため、地名や建物名などの固有名詞が同一の英語表記であるよう配慮しなければなりません。

「福祉設備」の一面も持つ案内サイン

近年、案内サインが持つ役割として「福祉設備」の一面が挙げられます。
歩行者と一言で言っても、高齢者や障がい者、乳幼児連れの人や車椅子を利用している人もいます。
それぞれ目線の高さが異なり、人によっては見ることが難しい位置や色もあるでしょう。

万人が見やすい文字の大きさやフォント、色づかい、バリアフリー設備や経路の表示、そしてサインの設置方法についても配慮がなされてきています。
何気なく目にするサインの多くは、設置されている高さや支柱の位置、そして色合いなどにも意味があり、誰しもが見つけやすく分かりやすい工夫がちりばめられています。

「案内サイン」の種類

国内外旅行者が迷わず目的地へたどり着くよう、街中へ設置されているものが「案内サイン」です。
案内サインは以下の5つに分類されます。

  • 案内地図サイン:現在地や施設などの位置を地図上で示す
  • 誘導サイン:施設の方向や距離を矢印などにより指し示す
  • 位置サイン:施設名称や現在地名などを告知する
  • 規制サイン:進入禁止や路上喫煙禁止など、規制事項を示す
  • 説明サイン:施設名や利用案内などを説明する

設置場所が狭小だったり、関連性が高かったりする場合などは、これらを統合して設置している場合もあります。

「i」マークの認知度

現在は海外でも広く用いられていますが、街中で案内=informationの「i」をかたどったマークを目にしたことがあるでしょう。
案内サインはその設置場所が見つけやすいことが大前提のため、離れた場所からでもこの「i」マークが目立つよう表示されています。

案内サインは場所ごとに必要な情報を効果的に提供するため、案内地図サインにもこの「i」マークを表示することで、例え主要な施設が無い場所であっても、次に目指す経路を見つける手助けもしています。
以前は認知度が低かったこのマークも、次第に浸透してきているようです。

サインの一元的な管理

これまでは、案内サインが一元的に管理されていない場合が多くあり、汚れていたり壊れていたりしていて、役目を果たせない場合がありました。
現在では案内サインを市区町村内などの地域ごとで、台帳管理をすることが推奨されています。
定期的なメンテナンスや更新を行うことで、地域全体の一貫性や、本体の破損なども管理できるようになります。

落書きや張り紙防止機能を持った素材のサインなど、サイン本体も進化していますが、そうでないものも多いため、より一元的な管理が求められています。

初めて訪れた人でも迷わないよう、駅やバス停など、人々が移動の起点とする場所へ重点的に案内地図が設置され、主要な分岐点やルートに誘導サインを設置するなど、設置場所も工夫されています。
災害時にも役立つ案内サインは、見つけやすく・そして分かりやすく表示されるよう、管理をする人たちの綿密な調査や努力の元に進化し続けているのです。