町中や公共施設などで見かける「幟(のぼり)」と「旗」。
どちらも日本人にはなじみが深いものですが、幟と旗の区別はどのようにつけるのでしょうか。

せっかくなので知っておきたい「幟(のぼり)」と「旗」の違いについてまとめてみました。

幟(のぼり)とは

日本に旅行に来た外国人がまず驚くのは、町中にある幟(のぼり)の数だと言います。

幟は日本独自の文化で、その発祥は室町時代までさかのぼります。
室町時代は後の戦国時代のベースとなる、同族間や近い血縁同士での争いが多かった時代です。
あちこちで戦が起き、敵味方の区別がつかなくなってしまうため、自分の軍勢の幟を作り、それを掲げて敵味方を分別していました。

それまでは長い布を木に通して紐で釣り上げ、風になびかせる「流れ旗」を掲げていましたが、流れ旗よりもコンパクトに作れ、掲げても邪魔にならなかった幟が主流となっていったようです。

縦長で人目に付きやすい幟は、戦火が絶えても「広告資材」としての活用を見出され、現代まで脈々と受け継がれています。

旗とは

世界規模で見ても「旗」の存在しない国はないと言っても過言ではないでしょう。
世界のどの国にも「国旗」が存在し、国際的に重要な会議や競技などでは、国旗が掲げられます。

例えばオリンピックの入場行進などでは各国の選手代表が旗手を務め、自国の国旗を掲げて入場します。
国旗だけでなく、旗は軍隊、団体、施設、学校、個人、船舶などの標章として用いられる「特別な布」として認識され、デザインはそれぞれの意味が込められていることが多々あります。

旗はもともと幟同様に戦争で敵味方の識別をするために用いられているものでしたが、幟と違う点は、統率のための印として用いられていた点にあります。
大航海時代や植民地時代なども自国の旗を堂々と掲げて遠征していた点を見ても、旗は士気を高めるための重要なアイテムであったとみることができます。

幟(のぼり)と旗の違いとは

では、幟(のぼり)と旗の違いとは何でしょうか?

まず「素材」に違いがあります。
幟は薄くて風が吹いたら簡単になびくような素材に対し、旗にはしっかりとした生地が用いられます。
旗の周囲は三ツ巻にしたステッチ仕上げが多く、左上部の隅もしっかりと細工が施されています。

また、幟は乳(ちち)と呼ばれる輪をいつくか付け、片側で固定されているのに対し、旗が固定されているのは一辺だけとなります。

縦に細長く文字が入れやすい幟は宣伝に活用しやすく、多く立てることで賑わいも演出できるという特徴があります。
そのため、商品の宣伝だけに限らず、例えば神社での祭礼や国技館で力士の名前を掲げるなど、何かをアピールするために活用されることが多いようです。

半旗や弔旗、白旗など、掲げ方に意味のある旗に対し幟は特にルールなどはありません。
しかし宣伝用素材としては優秀であるため、生地の素材や形など種類も様々に進化しています。
自由度の高い幟は、今後も時代のニーズに合わせた進化が期待できるのではないでしょうか。