日本はピクトグラム大国です。
駅や空港公共施設をはじめ、道路標識、ショッピングモール、公衆衛生の至る所でピクトグラムが使用され、老若男女問わず広く認識されています。

便利なピクトグラムですが、昔から使われているものがそのままになっているものも多く近年になって見直しが求められています。
ピクトグラムにはどんな問題点があるのでしょうか?
改善や対策はなされているのでしょうか?

ピクトグラムの盲点

ピクトグラムとは図形や記号を組み合わせたデザインだけで、ひと目見てそこに何があるかを分かるようにするサインです。
トイレの入り口、エレベーターの位置、駅への方向など場所を示すものから、道路標識や立入禁止、禁煙など遵守すべきことを示すものなど、あらゆるシーンで活躍しています。
外国人観光客や子供などの字が読めない人にとっても、ピクトグラムはなくてはならない存在です。

しかし、そんなピクトグラムも欠点はあります。
例えば地名や駅名など「文字」で成り立っているものをピクトグラム化するのは困難です。
地名でいえば国旗や市章などデザイン化されているものありますが、一般認識度は高くありません。

また、同じデザインでも乗り物の形や人のしぐさなど、国によって解釈の違うものなども存在します。
例えば「触るな」という意味合いのピクトグラムは、手のひらの上に赤い丸と斜線で禁止マークを描いて表現していますが、海外の人から見ると「こちらへ来るな」という意味合いにとられるといった事例があります。

ピクトグラムの問題点と改善策

このような細かい問題点は長い間見過ごされてきましたが、2020年の東京オリンピック開催をきっかけにピクトグラムを改善する動きが出てきています。

実例を交えて以下にまとめてみました。

ピクトグラムによる駅名表示

前述したように「絵」や「記号」で表記するピクトグラムの弱点は、「文字列をイラスト化できない」点にあります。
例えば鉄道の駅名表記などは、漢字にひらがなとローマ字の読み仮名を付け、路線カラーの枠で囲むという形が一般的でした。
これだと色で路線は認識できても、字が読めない人には駅名がわかりません。

そこで通常の駅名のほかに、路線記号・駅番号・スリーレターコードと、路線ごとに設定した路線カラーを表示することにより、文字で駅名がわからなくても利用できる取り組みが始まっています。
また駅構内施設のエレベーター・エスカレーター表示を統一化し、矢印と組み合わせて大きくわかりやすく記す鉄道会社も増えてきています。

このように絵や記号にこだわらず、海外でも採用しているナンバリング制を導入することにより、駅名のわかりづらさを解消しつつあります。

訪日客の為の災害標識の整備

海外の人から見ると日本は災害の多い国と認識されています。
事実、ここ数年日本は大きな地震や台風、豪雨などの災害に見舞われいます。

東日本大震災をきっかけに日本の防災対策は全国規模で大幅に見直され、新たなピクトグラムのJIS規格を設け、統一して表記するよう呼びかけています。
その際、訪日客にもわかるようにローマ字や英語と併記することが望ましいとされており、外国人への配慮が見受けられます。

現在新しいJIS規格のピクトグラムはISO(国際標準化機構)にも提案しているとのことで、世界規模で災害への防災意識を高めるきっかけとなることが期待されています。

温泉マーク問題

メディアでもよく取り上げられたピクトグラムの問題点といえば「温泉マーク問題」です。
温泉マークは湯船と思わしき半円の中から三本の湯気がのぼりたつピクトグラムで、日本人にとっては認知度の最も高いマークの一つと言えるでしょう。

しかし、このマークは海外の人から見ると「何のマークかわからない」「湯気の出た料理に見える」などという意見が出たことから見直しが求められました。

そこで国は半円の中に人のマークを入れて、人が入浴している上に湯気をくゆらせたピクトグラムに変更するよう提案しました。
しかし、老舗温泉地から反発の声が上がり、結局温泉マークは現行通りのものも使用して良いということになりました。

ピクトグラムは時代の変化などによっても廃止になったり新たに生まれたりと、日々進化しています。
町中で見かけた時は、その表記に至った背景などを考察してみるのも面白いかもしれません。